『幻の光』は、宮本輝の小説を原作として1995年に映画化された。是枝の劇場映画デビュー作であり、また江角マキコの映画デビュー作でもある。夫を原因不明の自殺で失った女性の喪の作業(グリーフワーク)を、静かな視線で描写してゆく。ヴェネツィア国際映画祭で金オゼッラ賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得た。
キャスト:江角マキコ、浅野忠信 ほか
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01. Maborosi (1995) / 幻の光のあらすじ
ゆみ子が12歳の時、ゆみ子の祖母が失踪した。以来、ゆみ子は自分が祖母を引き止められなかったことを深く悔やんでいた。ゆみ子(江角マキコ)は25歳になって間もなく、祖母の生まれ変わりのように目の前に現れた郁夫(浅野忠信)と結婚するが、祖母の失踪はトラウマとなって今もゆみ子を苦しめている。しかし、郁夫との間に息子の勇一も生まれ、ゆみ子は幸せな日々を送っていたが、ある日、郁夫は自転車の鍵だけを残して列車に飛び込み、命を絶った。ゆみ子は祖母に続いて郁夫と、大事な人を次々と見送ってしまったと途方に暮れる。
5年後、ゆみ子は日本海に面した奥能登の小さな村に住む民雄と再婚した。先妻に先立たれた民雄には娘・友子がおり、春が来て夏が過ぎ、次第に勇一と友子も仲良くなじむようになって、ゆみ子にも平穏な日々が戻ってきていた。半年後、弟の結婚式のために里帰りしたゆみ子は、否応無く再び郁夫への想いに取りつかれる。冬のある日、漁師のとめのがゆみ子に蟹を取ってくると約束して舟を出した。しかし、静かだった海は次第に荒れ始め、夜になってもとめのは帰って来なかった。ゆみ子は、またしても自分が人を死に追いやったと絶望にとらわれる。やかて、とめのは無事に帰ってきたのだが、ゆみ子の心は晴れなかった。郁夫の想い出の品である自転車の鍵を民雄に見咎められたのをきっかけに、ついにゆみ子は家を出てしまう。おりからの葬列の鈴がゆみ子を死へと誘った。ゆみ子は海辺の岩場で燃える柩を見つめて、ただ佇んでいた。追って来た民雄も静かにゆみ子の後ろ姿を眺める。ゆみ子は民雄に「なぜ郁夫が自殺してしまったのか、いまだに解らない」と初めて打ち明けた。民雄は漁師だった父の「海に誘われるんだ。沖の方に綺麗な光が見えて自分を誘うんだ」という言葉を思い出し、「誰にもそんな瞬間がある」とゆみ子の言葉に応えるのだった。再び春が来て、穏やかな光の中にゆみ子たち家族四人の笑い声が響き渡っていた。(Movie Walker)
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